こんにちは、きよし弁護士です(弁護士細川潔、埼玉弁護士会、37962)

 

死者倫理について、その7です。

 

前のブログでも述べましたが、死者倫理とは

 

「亡くなった人の扱いについて、哲学の観点から考える学問」で「なぜ故人を敬わなければいけないのか、どこまで敬えばいいのか、特に社会の中では故人を尊重するべきなのかといった問いを考察」する学問です。

 

死者倫理と著作権法に関する話の続きです。

 

前回のブログで、著作権法60条において著作者の死亡後における人格的利益の保護が規定されていることについて述べました。

 

さらに、著作権法116条では、著作者の死後における人格的利益の保護のための措置が定められています。以下のような規定です。

 

「著作者又は実演家の死後においては、その遺族(死亡した著作者又は実演家の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は、当該著作者又は実演家について第60条又は第101条の3の規定に違反する行為をする者又はするおそれがある者に対し第112条の請求を、故意又は過失により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為又は第60条若しくは第101条の3の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる」

 

要するに、60条違反の行為があった場合、著作者の遺族が、差止請求や名誉回復等措置請求をすることが認められているのです。

 

ところで、著作者人格権は、一身専属的権利であるため、著作者の死亡とともに消滅し、相続や譲渡の対象にはならないと解されています。

 

そうだとすると、著作者人格権が一身専属性であることと著作者の「遺族」が差止請求等を行えるとすることは矛盾しないのか?

 

この点については、116条が著作者の死後における人格的利益の保護の実効性を確保するための規定なのであるため、矛盾はしないと解されています。

 

つまり、著作者の生前の意思を最も適切に代弁することができる遺族が、著作者の死後における人格的利益の侵害を防止し、又は名誉回復等の原状回復のための措置を講ずることができるとすることで、死者の著作権を保護するための規定であると解されているのです。

 

また、116条の規定は、著作者の死後における人格的利益を保護するための措置として、著作者の遺族等に「特に」請求権を認めるものであり、著作者人格権が一身に専属する権利であることに抵触するものではない、ともされています。

 

いずれにせよ、矛盾するものではないという解釈なのですが、一身専属的であるにもかかわらず遺族によって行使されるというのは、少し違和感が残りますね。

 

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